■嗅覚障害とは
「においが感じられない」、「においの感じ方が今までとは変わった」という方、
それは嗅覚障害かもしれません。
また味覚は、嗅覚と深くかかわっており、においがわからなくなると、食事の味がわかりづらくなります。
一番の問題は、嗅覚障害になると「ガス漏れが起きても気づけなくなる」など有害なものをふるい分ける力が低下し、日常生活で危険が伴う場合がでてきます。
■原因
人がにおいを感じるプロセスを簡単に解説します。
まず、においの成分が鼻へと入り嗅細胞(きゅうさいぼう)へと向かいます。
嗅細胞は嗅粘膜(きゅうねんまく)にあり、また嗅粘膜は嗅神経(きゅうしんけい)につながっています。
そのため、嗅細胞がにおい成分を感知すると電気信号を発信し、それが大脳前頭葉へと伝わることで「におい」として認識される仕組みです。
嗅覚障害はこの「人がにおいを感じるプロセス」のどこかに障害が生じると発症します。
発症の原因となる主な病気は、「慢性副鼻腔炎」「感冒(風邪)」「頭部外傷」の3つです。
また嗅覚障害は、障害が起きている部位により「呼吸性」「嗅粘膜性」「嗅神経性」「中枢性」の4つに種類がわかれます。
■4種類の嗅覚障害
「呼吸性嗅覚障害」
におい成分が何かしらの原因により、物理的に鼻腔内でブロックされてしまい、嗅粘膜に届かない状態です。
原因としては、ポリープを伴う慢性副鼻腔炎や、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症などがあります。
「嗅粘膜性嗅覚障害」
鼻炎や副鼻腔炎などの病気が原因となり、嗅細胞の存在する粘膜に障害が起こることで生じる嗅覚障害です。
「嗅神経性嗅覚傷害」
風邪の原因となったウイルスによる感染や、抗ガン剤や抗甲状腺薬などの薬剤によって嗅神経に障害が起こることで生じます。
「中枢性嗅覚障害」
頭部外傷、脳腫瘍、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病などの影響で中枢神経に障害が起こることで生じます。
■検査・診断
感冒、副鼻腔炎、外傷の有無、既往歴、飲んでいる薬(抗ガン剤など)などを確認いたします。
物理的な問題によるものは、呼吸性嗅覚障害のみですので、問診は非常に重要となります。また、発症してからどのくらい経っているかも確認します。次にファイバーで鼻の中を観察し、ポリープなどがないか確認します。
そして、どのくらい嗅覚があるかを調べる検査(アリナミンテスト)を行います。
この検査を行うことで、治療前後の変化を比較し、治療効果を客観的に判断できるようになります。
■治療
呼吸性嗅覚障害
原因となっている病気(慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症など)の治療を行います。
中枢性嗅覚障害
原因となっている病気(脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病など)の治療がまず重要で後方病院へ紹介します。原疾患が安定している場合は、漢方薬を使用します。
嗅粘膜性嗅覚障害・嗅神経性嗅覚傷害
ステロイドホルモン剤の点鼻や内服、ビタミン製剤、漢方薬などを用いて治療を行います。このタイプの嗅覚障害は、改善率は5割程度と言われていますが、血清亜鉛が低下している方は亜鉛製剤が有効な場合もあります。
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